3周年おめでとう!4つ葉へのメッセージ
奥山千鶴子さん(NPO法人「びーのびーの」理事長)
プロフィール:NPO法人「びーのびーの」理事長、NPO法人子育てひろば全国連絡協議会理事長など。「特定非営利活動法人びーのびーの」の代表として、子育て中の親たちとともに2000年4月、商店街空き店舗を活用し「おやこの広場びーのびーの」を立ち上げた。2006年3月には、横浜市港北区委託事業として地域子育て支援拠点「どろっぷ」をオープン。子育て当事者の力を活かした地元の幼稚園・保育園ガイド作成。子育て応援サイトの運営のみならず、学生からシニア世代まで多様なボランティアに支えられ、地域に根ざした幅広い活動を展開中。中学生を筆頭に2男1女の3児の母。主な著書に「子育て支援NPO
親たちが立ち上げた おやこの広場びーのびーの」(共編著 ミネルヴァ書房 2003年)、「50のキーワードでわかる 子育て支援&子育てネットワーク」(共著 フレーベル館 2007年)。
聞き手:4つ葉プロジェクトHP運営スタッフ
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| 4つ葉 | 以前、菊名の「ひろば」にお邪魔したとき、国際会議の運営をしていた方がスタッフにいらっしゃるとお訊きしました。もしかしたら奥山さんですか? |
| 奥山 | そうです、そうです。昔国際会議の運営会社にいたんです。 |
| 4つ葉 | 人を集めるのに、イベントの立ち上げ方や企画の立て方を解っている人がいると強いだろうなと思って。 |
| 奥山 | NPO法人「びーのびーの」を始めたときに、仕事で10年やっていた時の大変さを振り返ってみて、子育てしながらもどこか余力があるなって思っていたんです。この子たちが育っていくために地域の中でできることがありそうだなって思ってました。 企業って、ほら、課題解決型じゃないですか。こういうこと(事業)するのでも、居場所作るのでもそうなんだけど、今課題があるんだったら、それをどうやったらいい形にできるのか、子どもたちが育ちやすい環境になるのかってことを仲間で話し合う。こんなのあったらいいよね、ないんだったら作ればいいじゃないって始めたのには、企業で課題解決型の仕事をしてたっていう経験が大きかったんですね。会社で担当していたのは、医者の国際会議もあればクリーニング屋さんが集まる会議、バーテンさんの会議とか、いろいろ経験しました。まず相手ありきだから、相手にとって何が最善かっていうのを考えながら仕事してました。世界中から来る人たちが、日本に来て楽しかったって帰ってもらいたいなという思いもあった。「地域の中で子どもを育てていく」っていう課題ができたときに、何があったらいいのかなって考えるのは、私にとってはごく自然なことだったんですよ。 |
| 4つ葉 | 会社時代の「お客様」が「地域」にシフトしたという感じですか? |
| 奥山 | 最初は仕事としてやるつもりはなかったので、ボランティアとしてできることは何?って。子どもがそばにいてもできるような活動。NPO法人「びーのびーの」ができる3年ぐらい前から、口コミ情報をもとに地域の幼稚園ガイド、お医者さんガイドなどを原(美紀)さん(「びーのびーの」副代表で「どろっぷ」施設長)たちと一緒に作ってました。で、「びーのびーの」を立ち上げる時には、法人として責任を持てる、口コミだけじゃないものにしていこうと。 団体を立ち上げる際には、一緒にできる何人かの人たちがいて、その人たちの気持ちがうまく合致したときにいい事業になると思う。原さんは、自分もダンナさんもご両親も地元の方です。原さんは、人を繋いでいくのがすごく上手だから、現場中心でやってもらっていて。私は行政と掛け合ったり、外に向けて発言していくような役割分担が自然とできたところがあります。 |
| 4つ葉 | 奥山さんたちは、職業を通して培われた知識、スキル、発想の仕方などを、地域活動でもうまく生かして来られたんですね。今、いろんな経験をして、様々なスキルを持ってお母さんになる人は多いから、元の職場に戻るっていう選択もありだけど、自分の生き方に合った形で発揮してもらえるといいですね。地域で生かしていただくもよし。 |
| 奥山 | 本当に。いろんなタイプの人がいて、それぞれの力が発揮できるのが大事ですね。 |
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| 4つ葉 | 「親たちが立ち上げた! 『おやこの広場びーのびーの』」(ミネルヴァ書房)を拝読すると各章ごとに署名原稿で書かれていて、あれだけ書ける人がいらっしゃるのは強いなーと思いました。人材育成という面での策はありましたか? |
| 奥山 | 本にも書いたんですけど、「びーの」もいろいろすったもんだあって……。広報紙の巻頭記事を私が書いていた頃、「奥山の言ってることに納得できない」、「考え方が違うんじゃないか」とか。やっぱりNPOってフラットな関係で、代表はたまたま代表だというだけで、それぞれの分野でこういう気持ちでやっているっていう気持ちのぶつかり合いの中から生まれてくるものもありますよね。それを超えたときに、思いの共有ができてくると思っています。 「幼稚園+保育園ガイド」には、乳幼児期から幼稚園・保育園へ繋いでいく役割として、親には「視点」を確かに持っていてもらいたいという願いが込められています。幼稚園を選ぶ時、ある点では評価しても、別の点では足りなくて選べないことがあるかもしれない。でも、いろいろ考えてトータル評価で最終的に幼稚園を決めるっていうこと、親として「なぜここにしたか」っていうことを持ってもらいたいんです。近いし、みんなが行くから何となく決めたというのとは違う。いろいろ見て、感じて、"親としての最終決断"をして欲しい。子育て支援で何がしたいって、親が判断できる力をつけること。どんな稚拙な判断だろうが、決めることができる親になることが大事だと思ってます。決めるためには情報収集しなくちゃいけないし、最終的に親が選んで決める。親として大事なのは、子どもに何をやってあげるかっていうことじゃなく「腹を括ること」、「覚悟」だよね。「何があったって親が引き受けるよ」っていうことの一つに、幼稚園・保育園を選ぶってことがある。子どもは選べないですから、漫然と選ぶんじゃなく、なぜこれを選んだかっていうことを持って欲しいな、と。 |
| 4つ葉 | 考えずに済ませてることもあるかもしれないですね。 |
| 奥山 | みんなで言ってるんだけど、(ガイドの)編集を経てスタッフになるっていうプロセスに、すごく意味がある。今の親としてどうする?っていうのを迷いながら作っていくことは、「ひろば」に来る親の思いにも通じると思うんですね。地域のことを考えるとか。編集を通じて親も子ども達も仲良くなっていくしね。 ガイドに掲載される保育園の座談会は夫婦での参加が多かった。保育園はパパの協力なしには送り迎えできませんからね。これをきっかけに夫婦で共同で何かやるっていう形ができるといいなとも思うし。パパは肩に力が入ってないのがすごく良かったし、面白かったですね。 ガイドはホントに園の情報が欲しい!っていう人たちが作ることに意味があるので、子どもが大きい私達は手を離す。編集作業をするときの保育の手配や、広告もらうための営業などは私達がやって、特集ページや座談会については、まさに探そうとしている人たちで編集してもらってます。校了前なんかガイドに関するメールが夜中じゅう飛び交っています。でも、これをくぐり抜けた人たちが、「びーのびーの」のスタッフになったりしてきました。 |
| 4つ葉 | 広場に遊びに来ている人たちにも声をかけるんですか? |
| 奥山 | 親子ボランティアの中でも声をかけます。今年は編集のプロに近いお母さんが2、3人いて、広告の構成もすごくきれいにできて、広告もいっぱいとれたんですよ。 |
| 4つ葉 | どこからも助けを得ないで、自分たちで情報を集めていらっしゃる。私立幼稚園連合会にお願いしたりすると、お墨付きをいただけて仕事は進め易かったりするんですけどね。掲載されるのは嫌だとかいう園も出てきますでしょ? |
| 奥山 | 最初はいろいろありましたよ。そういう交渉ごとは私の役目。「他人のふんどしで儲ける気ですか? 」と言われたこともありました。お母さん達は情報が欲しいし、園の特色とかを出して欲しくて、随分交渉しました。今年驚いたのは3月に保育園の経営者が変わっちゃった事件。 |
| 4つ葉 | え? |
| 奥山 | 3月中に園にアンケートをとり、最終の確認を4月にしたところ「法人が変わり、教育方針も何も変わったので載せられません」って言われて「ひぇぇーっ!」って。最終的にはギリギリ入ったんだけど、いやはやびっくり。保育園でそんなこともあるんだ、と。だって預かってるお子さんに対して、どう責任取るのかって思いましたよ。
このように、地域の幼稚園・保育園情報は私たちNPOが一番持っているっていうことになるんですよね。行政は、幼稚園や保育園のことはなかなか一緒に語れない。でも実態として、お母さん達の間では「二重保育」ならぬ「リレー保育」っていうらしいのですが、保育園に入園してそこから幼稚園にも通うという方がいたり、認定こども園などの制度もできるなか、両方を語れることが大事です。制度がどうだろうが、親たちの利用状況は別なんですね。待機児童について、地域の状況はどうなのかということをこの9年間の経過を含め書いています。待機児童は、また増えて、707人(横浜市全体)になっちゃった。 |
| 4つ葉 | ガイドの発行部数はどのくらいですか? |
| 奥山 | 2500部です。営業用や贈呈分も含まれています。港北区の出生数は年3200人。子どもはまだ赤ちゃんだけど参考に買う人、今年入園だからと最終的に買う人がいると思うので、子どもの人数分つくっても大丈夫だろうと試算しました。あと書店さんからも、「もう予約が入っています」と注文が来たりもします。バーコードがないので書店では扱いにくい品物ですが、私たちが搬入をして販売してもらっています。うちの事業の中では一番収益を挙げている事業です。 |
| 4つ葉 | 毎年発行というのも大きいでしょうね。後になる程に実績ができるから楽になる。 |
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| 4つ葉 | 「びーのびーの」代表以外にも、奥山さんはいろいろなことをなさっています。「ひろば全協」(NPO法人子育てひろば全国連絡協議会)の理事、国の審議会委員に、社会保障国民会議……。 |
| 奥山 | 外での仕事も多いけれど、それはやっぱりね、NPOはお金がない分、人的ネットワークが大事だと思うからです。そこで戦っていくしかないんですね。
横浜市も大きいので、その中でNPO法人「びーのびーの」がどれだけ頑張っても、なかなかいろんなことは変わっていかない。4つ葉もそうだと思うんですけど。私たちも市内全18区の子育て支援に関わるNPOや任意団体に声をかけて「よこはま一万人子育てフォーラム」(以下、一万人フォーラム)っていうネットワークを作って、横浜市に1万人の声を届けようとアンケートをやったことがすごく大きくてね。
横浜市では、いろんな施策を区で決めるんじゃなくてほとんど市議会をもつ市が決めるんです。けれども、区によって人口構成も、必要とされている支援も全然違う。だから、一律で施策を打つこと自体ナンセンスじゃないかって思いもあって調べてみたら、やっぱりそれぞれでスタンスが違ったんです。サークル支援ひとつとっても、補助金を出す区もあれば出さない区もあったし、生涯学習担当が管理したり、子ども家庭担当の保健師さん達が担当しているところもあった。 そういう風に、区によっての違いなどを情報交換する中で、「いよいよこれは声を挙げていかないとマズイよね、自分たちの身を守るためには情報交換が力になる」と感じてね。で、1万人には至らず7000人近くだったんだけど、そこまで声を集めてみると、横浜市はどんな声が集まったのか聞いてみたいと。私たちは当時の助役さんに結果をお届けしました。その後、横浜市が「親子の居場所調査(乳幼児)」を一万人フォーラムに依頼してくれました。 その頃はまだ、私たちも「おやこの広場びーのびーの」を自主事業として運営していた頃だったし、自分たちの身になることだからということで、手分けをして幼稚園、保育園、図書館、社協、サークルなど13分野について調べる余裕がありました。各区ごとに13分野調べると同時に、各分野ごとの取りまとめも自分たちでやった。私は「広場・サロン」と「幼稚園」の担当。そうすると18区の全部の情報が私のところに来る。その当時「広場・サロン」の数なんて市は把握していませんでした。 全部を取りまとめて、課題をもとに報告書にして、横浜市に提出したんです。それは例えばシンクタンクがやるように数字の羅列と分析みたいな感じだったから、そのデータを私たち独自の視点で読み取って、今の横浜市の子育て現状を親向けにまとめた「よこはま子育て支援のツボ!」っていう本を出しました。 |
| 4つ葉 | それって伝説的な本ですよね。 |
| 奥山 | データはすごくきっちりしていたから、それを読みやすく作ることはとても意味のあることでした。スタッフの中にも「保育園のことなら任せてよ」っていう人が出てきたりもしたし、行政とのつながりができたことが大きかった。市が音頭をとって、各区に「一万人フォーラムのメンバーが来たら協力してあげて」って通達を出してくれたので、調査がやりやすいということもありました。そのときから、メンバーが区の担当者と顔の見える関係になってきたし、区でやってる子育て支援のメニューもわかるようになってきました。 |
| 奥山 | 昨年から今年にかけて「ツボ本」の見直しをやろうっていう話が出ています。この5年間でどこまでできて、何ができなかったかを振り返ろうと。当時、一番にやらなくちゃいけないって言ってたことは「居場所」だったんです。それについては目標にかなり近づけたんじゃないかなって思います。 |
| 4つ葉 | 目標は何カ所だったんですか? |
| 奥山 | 当時、施設型の広場サロンは、ほとんどなかった。児童館もなかった。2002年に「つどいの広場事業」ができて「びーのびーの」は受託が決まった翌年から、一万人フォーラムのメンバーにも絶対受託して欲しいと思い、ネットワークの中で、ひろば事業に関わるフォーラムをやったり、同じ思いを持つ仲間に「エントリーしてね」って言いました。 横浜市の次世代育成行動計画が出た年には、私はその委員もしていたので、「居場所」を目標値として入れ込むことについて委員会で発言しました。その際、人口規模的につどいの広場事業だけでなく、地域の子育て支援の核となるような場所を求めていた私たちは、武蔵野市にある『0123吉祥寺』のような場所も横浜市には必要ではないかと提案しました。「小さな広場だけではなくて大きな拠点が必要だってことを、人口比率などのデータの裏づけをもって言うこと」とアドバイスされたので、「0123吉祥寺」のある武蔵野市のデータ(人口13万人 出生数1000人/年 拠点数2カ所)を調べると、人口規模から見たら、港北区(人口32万人 出生数3200人/年)だけでも大きな拠点が6カ所必要だってことが判りました。武蔵野市のデータと利用者数とを照らし合わせて、「拠点を作ればこれだけの需要がある」ことを、次世代の委員会の中で示しました。それで、次世代育成行動計画の目玉として「地域子育て支援拠点」を作ることが決まったんです。 |
| 4つ葉 | だから今続々とできているんですね。 |
| 奥山 | そうなんです。ひろば事業を始めて仲間を増やしていったけれど、人口規模から見ると小さな広場だけでは到底間に合わない。新たにきちんと機能を持ったハブ的機能をもった拠点を整備することに意味があると提案して、事業化が実現しました。拠点のひとつ目をNPO法人「びーのびーの」が受託。今横浜市にある9カ所の地域子育て支援拠点(以下、拠点)のうち6カ所は一万人フォーラムを通じて出会ったNPOの運営です。 拠点は大きな事業で委託事業ですから、市や区と戦っていかなくちゃいけないところがあるんですよ。つどいの広場は補助事業だから、あんまりうるさいこと言われず自由にやれますが、子育て拠点は委託ですから、税金を使って行う事業を「NPOに委託した意味」が行政にも突きつけられます。「本当に成果は出ているのか」、「NPOでいいのか」って言われた時に、「NPOだからこそいいんです」と行政に言ってもらえるようでないといけない。 質の担保もネットワークの中で高めていかなくちゃいけないと思ってます。その辺は原さんが最前線で取り組んでいるところです。子育て支援拠点は、新しい事業で、これは委託といえども、これまでひろば事業として取り組んできた私たちの意見も大いに反映させて欲しいという思いがある。ひとつ一つの案件に対しては、一緒に議論した上で、実施したい。そうでないと「協働事業」ではないですよね、っていうことを随分言っています。 拠点機能には、「ネットワーク」と「人材育成」が入りました。「地域で子育て支援をしている人のネットワークづくり」っていうのが要綱に入っている。拠点選定の審査委員会で「地域とネットワークはあるのか」、拠点だけを運営していればよいのではなく、「地域とどう連携するのか」についても審査される。そういうスタンスのある団体じゃないと受託できない基準になりました。そうすると地域との連携のない企業・団体はなかなか入ってこられないんです。 |
| 4つ葉 | 今のところは、結構大事なポイントですね。 |
| 奥山 | 拠点は地域との連携なくしては語れないと思っています。行政と「どろっぷ」と地域で関わってくれる人の協働運営になります。 |



